できる治療は「すべて」やって欲しいという患者さんがときどきおられます。最近はコロナの影響もあって、電話でのコミュニケーションをとることが多く、十分に話し合うこともできません。「すべて」と言われてると、医療者は気管挿管や胸骨圧迫、透析も含めてとにかくfullの治療を想起してしまい、陰性感情を感じることも多いでしょう。そんなときにどう考えたらいいか、どう確認したらいいか、の話。
Discussing Treatment Preferences With Patients Who Want “Everything”
https://doi.org/10.7326/0003-4819-151-5-200909010-00010Different treatment philosophies underlying requests for “Everything”
「すべてやってくれ」という希望の根底にある治療の考え方の違いEverything that might provide maximum relief of suffering, even if it might unintentionally shorten life.
Everything that has a reasonable chance of prolonging life, but not if it would increase the patient’s suffering.
Everything that has a reasonable chance of prolonging life, even if it may cause a modest increase in suffering.
Everything that has a reasonable chance of prolonging life even a small amount, regardless of its effect on the patient’s suffering.
Everything that has any possible potential to prolong life even a small amount, regardless of its effect on the patient’s suffering.
たとえ意図せず寿命を縮めようとも、苦しみを最大限に和らげることができること「すべて」
患者の苦痛が増えないのであれば、延命の見込みがあること「すべて」
苦痛を多少増やすとしても、延命の見込みがあること「すべて」
患者の苦痛につながるかにかかわらず、たとえわずかでも余命の延長につながる合理的なこと「すべて」
患者の苦痛につながるかにかかわらず、少しでも延長できる可能性(延長できないかもしれない)があるもの「すべて」
「すべて」と言われてもその中身が大きく違います。大きなゴールが苦痛緩和にあるのか、余命の延長にあるのか、を見誤るとお互い不幸が待っています。
方針決定までの対応例
患者・家族に対しての問いかけ、声掛け
・「(御本人が)大切にされてきた価値観はどうですか?」
・「大切なご家族ですから、少しでも長生きして欲しいというお気持ちは当然だと思います。御本人の立場だったらどう希望されるでしょうか?」
・「この治療(気管挿管など)をすることで、たしかに寿命は数日延びるかもしれません。ただ治療を行って前のようにお話をされたりお食事を摂られたり、というのは難しくなると思います」
・「点滴をすることで、余命は延びるかもしれませんが、腹水や浮腫が増えて御本人が辛く感じられる可能性があります」
・「この治療(気管挿管など)をすることで、どうなっていくかについても説明してもよいでしょうか?」
患者に害がなされるかもしれない治療方針となった場合
医療チームへの対応
・なぜ、この治療選択をするに至ったかの背景を医療チーム(特に看護師)と共有する
・患者を中心に据えた他の目標(症状管理、患者家族の感情サポートなど)を共有する
・方針見直しのタイミングを協議する
医療チームで患者家族の背景を共有することはとても大切なことです。とくにコロナのため、面会が制限されており、看護師やリハビリスタッフと家族が関わる機会が少なくなっています。患者家族とコミュニケーションを取るのが医師だけである場合は、特にチームで情報共有していきましょう。