Annals for Hospitalists2023年5月から
急性膵炎の最適な輸液
2022年に見逃したかもしれない感染症の話題
なぜこの論文を?
ブログ主はAmerican college of physicianに入会しており、Annals of Internal Medicineの恩恵に受けています。ACP journal clubもその一つなのですが、Annals of Internal Medicineには優れた企画が山ほどあります。
その一つがAnnals for Hospitalistsでホスピタリストが抑えておくべきポイントを月1回まとめて教えてくれます。今回は5月分から御紹介。
Annals for Hospitalistsより
急性膵炎の最適な輸液戦略
Inpatient Notes
Fluid Resuscitation for Noncritically Ill Patients With Acute Pancreatitis
WATERFALL試験の結果から。
- 昔(私見):とにかく輸液たっぷり。体重あたり1mlの尿量がでるくらい、輸液を!200ml/hrでも300ml/hrでも!! ぁあ、肺水腫!?挿管だ!
- 今:1.5ml/kgのリンゲル液を。循環血漿量低下があれば、10ml/kgのボーラスを。過剰輸液は害。Cr1.1mg/dl以上またはBUN20mg/dl、尿量0.75ml/kg/hr未満、BPs90mmHg未満、Ht44%以上などで循環血漿量低下と判断。
と大きく変わりました。敗血症などでも体液量過剰は罪という風潮であり、膵炎も同様です。10年目ですら消化器内科(胆膵)の上司に「ガイドライン通りたくさん輸液しとるけど、入れたらいいってもんじゃないじゃろ。ちゃぷちゃぷになっとるで」と言われました。現場をよく知っている先生で、尊敬しています。
COVID-19以外の2022年の感染症の注目論文まとめ。
Highlights of Recent Articles From Annals of Internal Medicine
関心のあるものをピックアップ
HIV(+)のクリプトコッカス髄膜炎で、L-AMPのレジメンが従来に比べて非劣性
AMPH-Bを使わず、L-AMPを初回静注しその後2週間経口で死亡などが非劣性。non-HIVの患者は含まれていないので、要注意。
Staphylococcus aureus bacteremiaの死亡率
SABの死亡率は感染症科医の介入により減少傾向だが、それでも7日死亡率10%、1年死亡率30%は驚きです。
リファンピシン耐性結核に対する新レジメン
Bedaquiline(サチュロ)、Pretomanid、Linezolid、Moxifloxacin(BPaLM)24週の治療は標準治療(9〜20ヶ月)に対して非劣性でした。
遺伝子検査で薬剤耐性の有無を判断できるようになれば、日本でもこのような治療が選択肢になってきそうです。数週間経って耐性でした!となっても・・・
リファンピシン感受性結核に対するレジメンもN Engl J Med 2023; 388:873-887からでています。でも遺伝子検査がないと遅い・・・
まとめ
Annals for Hospitalistsからのまとめでした。Annals of internal medicineは生涯学習に役立ちます。