ACPJC

糖尿病のない肥満に対し、週1回セマグルチドは毎日リラルチドより体重減少が大きい

ACP journal clubより

今回も痩せ薬の話。

In overweight or obesity without diabetes, weekly semaglutide vs. daily liraglutide increased weight loss at 68 wk
https://doi.org/10.7326/J22-0023

臨床疑問
糖尿病を伴わない過体重または肥満の成人において、食事と身体活動に関するカウンセリングに週1回のセマグルチド vs 毎日のリラグルチドを追加すると、体重減少が改善するのか?
デザイン
RCT(STEP-8 [Semaglutide Treatment Effect in People with Obesity 8])
盲検化
治療割付の隠蔽化:盲検化(患者、治療者、データ収集者、データ安全監視委員会[介入群対プラセボ群])、非盲検化(介入群間)
セッティング
米国の19センター
患者
18歳以上の338名(平均年齢49歳、女性78%)、BMI30以上またはBMI27以上+併存疾患(循環器疾患、脂質異常、高血圧、閉塞性睡眠時無呼吸症候群)、過去に1度以上ダイエットに失敗したという自己申告がある。
主な除外基準:糖尿病、HbA1c≧6.6%、過去90日間で5kgの体重変化
介入
・週1回セマグルチド(0.25mgで開始、16週かけて2.4mgに増量)n=126
・毎日リラグルチド(0.6mgで開始、4週かけて3.0mgに増量)n=127
全患者は食事に関するカウンセリングと身体活動の推奨を受けた。
基金
ノボ・ノルディスク
結果概要
非糖尿病の肥満成人に、食事と身体活動に関するカウンセリングに、週1回のセマグルチド、毎日のリラグルチドを追加すると68週目の体重減少が増加した。

セマグルチドはオゼンピック®、リラクルチドはビクトーザ®が日本でのブランド名です。どちらも日本では糖尿病が適応疾患であり、保険用量も異なります(セマグルチドは1.0mgまで、リラグルチド1.8mgまで)。肥満患者での保険適応はありません。
もとのJAMAの論文を見てみると、参加者の平均体重は104.5kg、BMIは37.5と日本で一般的にであう患者層と異なっています。

体重減少10%のNNTが3、体重減少20%のNNTが4、ととんでもない数字で、効果が1年以上続く点も驚きです。一方、セマグルチド、リラクルチドは治療中止がそれぞれ13.5%、27.6%、消化器症状の副作用は80%台とあるため、それなりに合併症は多そうです。セマグルチド、リラクルチドは両方ともノボ・ノルディスクの製品であり、今回の研究の出資元はノボ・ノルディスクということを差し引いてもすごい・・・

リベルサス®はセマグルチドの経口薬ですが、経口でも同様の効果がでるのは別問題なので新しい試験を待ちましょう。

よくわからなかったところ
体重減少10%のARRが45%なのに、NNTが3になるのはなぜ?
→元論文を読まないといけない。

元論文を読みました。が、書いてある数字は変わらず、同じ内容でした。

  • 体重10kg減 ARR45%→NNT2.22
  • 体重15kg減 ARR44%→NNT2.27
  • 体重20kg減 ARR32%→NNT3.13

なので、NNTは四捨五入ではなく切り上げて記載するのがルール?と思って調べると、NNTは常に切り上げと書いていました。これが常識なんですね。

論文の抄録には、open-labelと書いてあったが、allocationはconcealされている。でもその中に、unblinded(active treatment comparisons)ともある。
→週1と毎日の違いは盲検化しにくいので、そこがopen-labelになっている?週1かプラセボ、毎日かプラセボかについては隠蔽化されている?ということだろう。active treatment comparisonsが非盲検化、というのは、治療群間(セマグルチドとリラクルチド)は非盲検化という意味だろうか。これももと論文を読まないとわからない。

元論文を読みました。Randomization to semaglutide or liraglutide was not masked (due to dosing differences), but active treatment groups were double-blinded against matching placebo groups to mitigate potential bias arising from open-label comparisons. The placebo groups also facilitated comparisons of semaglutide and liraglutide vs placebo (secondary trial objectives), allowing evaluation of trial results in the context of previous finding.とありました

週1セマグルチドvs週1プラセボvs毎日リラグルチドvs毎日プラセボを3:1:3:1で割り振りしていました。セマグルチドとリラクルチドは剤形の違いでhead to headでは比べにくく、オープンラベルになってしまうけど間にプラセボを挟むことでバイアスを軽減するというデザインになっています。

こちらの記事もおすすめ

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です