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外来軽症憩室炎患者に抗生剤なしで帰宅しても、抗生剤ありに対し非劣性

ざっくり言うと

P(患者):膿瘍形成のない軽症憩室炎の外来患者
I(介入):経口抗菌薬なし+NSAIDs or アセトアミノフェン+PPI
C(比較):経口抗菌薬あり+NSAIDs or アセトアミノフェン+PPI
O(結果):再入院、疼痛コントロール、臨床経過が非劣性

憩室炎に対して、抗菌薬は必須と筆者は思っていましたし多くの医療機関で抗菌薬を処方していると思います。風邪に抗菌薬は不要と言われて久しいですが、「軽症憩室炎に抗生剤を出したらだめですよー!」と窘められる日も来るのでしょうか?

ACP journal clubより

In mild acute diverticulitis, outpatient therapy without antibiotics was noninferior to antibiotics

https://doi.org/10.7326/J21-0022

臨床疑問:救急外来で軽症急性憩室炎に対し、抗生剤なしで外来フォローは安全か?効果はあるか?
デザイン:RCT(非劣性試験)
盲検化:非盲検化(open-label)
セッティング:スペインの15病院

患者:480名、18-80歳(中央年齢57-59歳、女性53%)
・救急外来の軽症憩室症患者(CTでmodified Neff classification分類grade 0)
・救急外来で症状コントロール良好
・主な除外基準(過去3ヶ月で憩室炎、過去2週間以内に抗菌薬治療歴、免疫不全、他の併存症、SIRS4項目のうち1項目以上、CRP>15mg/dl)

介入:
・非抗菌薬群(n=238):抗菌薬なし
・抗菌薬群(n=242):アモキシシリン/クラブラン酸(875mg/125mg)8時間毎
両群ともイブプロフェン600mg q8hr(またはアセトアミノフェン1g q8hr),+オメプラゾール20mg qdの内服、2日間の透明な流動食(clear liquid diet)、その後28日間の低残渣食

基金:外部資金なし

結果概要:救急外来で症状コントロールされている軽症憩室炎患者を、抗菌薬なしで抗菌薬治療をしても、90日再入院は抗菌薬ありに比べて非劣勢である

この研究の興味深い点は、非抗菌薬群・抗菌薬群ともにNSAIDsまたはアセトアミノフェンが投与されている点です。発熱疼痛時の頓用ではなく、定期で処方されています。憩室炎の主病態が感染だけではなく、単純な炎症が中心であればNSAIDsやアセトアミノフェンが症状や経過の改善に寄与したのかもしれません。

2017年のACP journal clubでも、左側憩室炎の抗生剤の有無について検討されています。

今回の論文とずいぶんと結果が違う!両群とも成績悪すぎッ!と思いませんか?再入院は今回は3~5%、2017年は12~18%です。この原因と思われるのは組入基準の憩室炎の重症度です。

引用:https://doi.org/10.1111/codi.12449

今回はmNeff Stage 0が対象でいわゆる膿瘍のない憩室炎=軽症で納得なのです。しかし、2017年の場合はHinchey Stage 1は、局所性の膿瘍あり(5cm未満)を組入基準にしています。5cm弱の膿瘍がある憩室炎を、抗生剤無しで経過を見る勇気はありません・・・びびってまず外科に一報入れると思います。ちなみに、mNeff分類の著者のMora-López L先生は、今回の元論文の著者でもあります。憩室炎の大家なのでしょう。

膿瘍のない痛みも強くない入院不要な患者さんについては、再受診の目安やリスク・ベネフィットをよくよく説明した上で抗菌薬を処方しない、というのも選択肢になると思います。

非劣性試験って?

抗生剤投与したほうが、プラセボよりよい結果、というのは通常のRCTで示すことができます。今回のよう経過観察のほうが抗生剤投与より結果がよい、という優越性を示すことは困難です。そのため、少し劣っていても、不要な抗生剤暴露減少、CDI減少、経済的効果、QOL向上などの他のよいメリットがあることを示したい場合に、「非劣性試験」が行われます。

この少し劣るくらい、がポイントで大きくすれば非劣性であることを示すことが容易になります。感染症の試験では10~20%と設定されてることが多く、例えば2006年のDAPT vs VCMのNEJMの論文は20%です(スポンサー様は大事!)。今回は7%と非常に厳し目な設定をしており、良心的(?)な研究デザインで、組入基準も厳密にされています。盲検化されていればなお強固なエビデンスになっていたでしょうが、外部資金もなしでここまでやるのは素晴らしいです。

 

 

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