I(介入):6週間の抗菌薬治療
C(対照):12週間の抗菌薬治療術
O(結果):6週間群で治療終了2年後の持続感染が増加した(NNH12)
なぜこの論文を?
最近は抗菌薬治療期間を短くしていくというのがトレンドです。市中肺炎に至っては、3日間の投与で経過が良ければ、抗菌薬中止しても構わない(追加5日間抗菌薬投与より非劣性)という話もあります。
米国IDSAのガイドラインでは、抗菌薬治療期間は1段階法と2段階法で異なり、1段階法では2-6週、2段階法では3〜6ヶ月と非常に幅があります。2013年のガイドラインなのでやや古く、最近の論文は引用されていません。UpToDateでは今回の論文が引用されていました。抗菌薬投与を6週間に短縮しても12週間に対して非劣性なのか?という論文。
ACP journal clubより
6-wk vs. 12-wk antibiotic therapy increased persistent infection in prosthetic joint infections managed surgically
https://doi.org/10.7326/acpj202110190-116臨床疑問:適切な外科的処置が行われた人工関節の患者で、6週間の抗菌薬投与は12週間に対して非劣性か?
デザイン:RCT
盲検化:割付は隠蔽化。アウトカム評価者は盲検化。
セッティング:フランスの28施設患者:18歳以上の適切な外科的処置が行われた膝・股関節の化膿性人工股関節患者410名
年齢中央値69歳、男性68%
主な除外基準:スクリーニングの21日以上前に有効な抗菌薬治療歴、敗血症に対し1度以上の人工関節置換術後、マイコバクテリウム・アクチノミセス・真菌・ブルセラが起炎菌介入:
外科的処置後に抗菌薬を開始。抗菌薬は主治医がガイドラインに沿って選択。
I:6週間
C:12週間基金:フランス保険省臨床研究プログラム
批判的?吟味
非劣性マージン10%は適切か?
感染症業界では非劣性マージンは10%程度が適切と言われています。ただ、一律に10%と言っても生命予後や機能予後に関わるものと、臨床的な治癒のような指標とを一律に論じるわけにはいきません。ただ、今回は非劣性を示せなかったため、マージンの多寡を論じても意味はありません。
negativeデータではありますが、臨床へのインパクトのある結果でした。
抗菌薬点滴静注の中央値が9日間ですが・・・
日本では点滴静注が9日間ということはなく、えらい短い印象を持ちます。別の研究では、(人工関節ではない)骨関節感染について、抗菌薬内服は静注に対し非劣性と言われつつありますが、非劣性試験結果をもとに、さらに非劣性試験を重ねるとどんどん効果は下がってしまいます。
まとめ
人工関節感染術後の抗生剤は6週間では不十分な可能性があります。サブグループ解析では人工関節を温存しデブリを受けた患者では、6週間治療では再感染率が高くなっており、注意が必要です。