I(介入):3時間以内のアルテプラーゼ投与
C(対照):対照薬
O(結果):機能予後が改善(NNT=12)
Fragility index 42と強固なエビデンス!!
なぜこの論文を?
脳梗塞急性期に、発症4.5時間以内であれば血栓溶解療法について検討することは常識になっています。
ACP journal clubに、脳梗塞発症3時間以内にアルテプラーゼを投与するエビデンスは「強固」であるか?という論文が取り上げられていました。エビデンスがあると思うのが普通じゃない?今更何が大事なの?と思いましたが、エビデンスの堅牢性を論じた論文のようです。
Fragility indexというものを使って検討しています。
ACP journal clubより
In ischemic stroke, IV alteplase within 3 h of onset improves functional outcome vs. control
http://doi.org/10.7326/J22-0069臨床疑問:虚血性脳卒中発症3時間以内にアルテプラーゼを投与すると、機能的転帰が改善するというエビデンスはどの程度強固なものなのか?
レビュー方法:対象の研究は2013年12月〜2021年3月までの複数回のデータベースと1987年から2013年までのシステマティックレビュー。
P:出血を除外するための頭部画像診断を行った脳虚血患者
I:アルテプラーゼ3時間以内
C:対照薬
O:個別のアウトカムが報告されているもの(訳注:機能予後)
含まれる研究:9件のRCT(n=1987、4件の研究で平均年齢66-85歳)。発症から3時間以内に治療された患者の割合は6〜100%。無作為化過程におけるバイアスのリスクは低かった(9件)。基金:Carol and James Collins財団
結果概要:能宗中の発症から3時間以内にアルテプラーゼを静注すると、コントロールと比較して機能的転帰が改善することが、極めて強力なエビデンスによって示されている。
批判的?吟味
Fragility indexとは?
なんと説明すればよいのか難しいですが・・・
例えば、脳梗塞急性期の患者にアルテプラーゼとプラセボをそれぞれ10人ずつ投与した研究があったとします。プラセボ群では2/10人で、アルテプラーゼ群では8/10人で良い結果であると、P=0.023で有意差があります。しかし、プラセボ群で、たった1人でも良い結果と判断が帰られてしまうと有意差がなくなり、もしかしたらこの論文は発表されなかったかもしれません(有意差がなくなるという表現に問題ありですが)。
この結果を覆してしまう人数がFragility indexです。小さければ揺るぎやすい、大きければ堅牢、堅固な研究と考えることができます。P値とも相関しますし、規模が大きい研究(Nが大きい研究)はFragility indexが大きくなりやすいです。
このメタ分析のFragility indexは42であり、Fragility indexは33を超えると「非常に頑健」とみなされるので揺るぎない結果!というわけです。
なぜFragility indexが大事なのか?
P値をみれば「あー、ぎりぎり有意差が出たな」っていう感覚はわかりますが、Fragility indexは直感的にわかるのが良い点です。
集中治療領域で、死亡率がアウトカムになっている臨床研究についてFragility indexを検討した研究があります。
40%以上の研究のFragility indexが1以下という衝撃の結果でした。有意差が出た!と言っても非常に脆弱なエビデンスです。
上記のCrit Care Med. 2016 Jul;44(7):1278-84.から引用
ちなみに、Fragility index48は、2010年LancetのCRASH-2(外傷患者へのトラネキサム酸投与)です。すごい!
まあ、小規模な研究は有意差が出ても、結局は偶然かもしれないのでP値だけで判断しないようにしましょうね、という教訓です。
まとめ
アルテプラーゼが有効なことは明らかですが、それが強固なエビデンスに裏打ちされていることが示されました。
とはいっても、3時間以内の投与に限定されている点、血管内治療の適応時間が延びている点にも注意が必要です。とにかく早く対応するに越したことはありません。
P値だけでなくFragility indexの考え方にも注目してみましょう。