I(介入):レリーバーがICS+SABA
C(対照):レリーバーがSABA単剤
O(結果):重症喘息増悪を軽減
なぜこの論文を?
喘息の増悪時(もはや発作とは言わない・・・)にはSABAの吸入が普通と思っていました。しかし、GINAではTrack1がICS+LABAがコントローラー、レリーバーとされており、こちらが推奨されています。Track2では昔ながらのStep upとSABAがレリーバーにになっています。
喘息増悪=SABAという古い教育を受けていたのですが、思い込みに一石を投じるのが今回の論文です。SABA単剤レリーバーに対して、SABA+ICSレリーバーは急性増悪を減らすか?を検討しています。
ACP journal clubより
In moderate-to-severe asthma, as-needed albuterol–budesonide reduced severe exacerbations vs. albuterol alone
http://doi.org/10.7326/J22-0066臨床疑問:中等症から重症の成人および小児喘息において、アルブテロール+ブデソニドの必要量に応じた合剤は、アルブテロール単独と比較して有効性と安全性はどうか?
デザイン:RCT
盲検化:割付は隠蔽化。盲検化(患者、臨床医、データ収集者、アウトカム判定者、データ解析者、データ安全監視委員会、原稿執筆者)
セッティング:北米、南米、欧州、南アフリカの295臨床センター患者:4歳以上の3132名
年齢中央値49歳、2.7%が12歳未満、女性・女児65%
過去12ヶ月間に重度の増悪が1回以上、FEV1が40〜90%(18歳未満は上限なし)、FEV1可逆性が12%以上、Asthma Control Questionnaire-5スコアが1.5以上,かつ中~高用量吸入グルココルチコイドまたは吸入グルココルチコイド-長時間作用性β2-アゴニスト併用(別のコントローラー併用または併用なし)が4週間以上安定して3ヵ月以上投与されていた者。
主な除外基準:過去3ヵ月間の全身性グルココルチコイドの使用、過去3ヵ月間または半減期の5倍の期間内の生物学的製剤の使用、慢性閉塞性肺疾患または他の顕著な肺疾患。介入:
両群とも以下をレスキューおよび運動前に必要なだけ加圧定量注入器により投与。
I:アルブテロール(180 mcg)とブデソニド(160 mcg)の合剤(高用量,n = 1016),アルブテロール(180 mcg)とブデソニド(80 mcg)の合剤(低用量,n = 1057),
C:アルブテロール(180 mcg)単独(n = 1059)基金:アビリオン(ブログ主注:アストラゼネカと共同開発している英国の製薬会社)
結果概要:中等症から重症の喘息において、アルブテロールとブデソニドの合剤は、アルブテロール単独の合剤と比較して、重症化するリスクを減少させた。
批判的?吟味
8重の盲検化
この論文では盲検化が非常に厳密に行われています。患者、臨床医、データ収集者、アウトカム判定者、データ解析者、データ安全監視委員会、原稿執筆者とガチガチに固められています。
盲検化に関してはこれ以上Biasの入る余地はなさそうです。
患者背景
がちがちに盲検化されていますが、患者背景にやや差が生じてしまっています。SABA単独群(アルブテロール単独群)でヒスパニック・ラテン系が多くハイリスク患者が多いと言えます。
4歳以上が組入基準になっていますが、登録された3132人のうち、4〜11歳は83人、12歳から17歳は100人しか登録されていないので、小児への適応はまだ早いかもしれません。成人には当てはめて良さそうな結果です。
また、アルブテロール群で18歳未満の割合が多いのも、結果に影響を及ぼす可能性があります。
まとめ
コントローラーにICS+LABAを使っている患者に、レリーバーをSABA単独にするよりSABA+ICSにしたほうが急性増悪を減らせるという結果でした。患者背景の人種、年齢にやや偏りがありますが、成人には適応できそうな結果です。ただ、ICS+SABAの製剤は日本では使えません。
SMART療法のようにレリーバーをICS+LABAで行うべきかは、ICS+LABA vs ICS+SABAで直接対決が必要そうです。