I（介入）：食塩代替物（５％以上を塩化カリウムに置換）
C（対照）：通常の食塩
O（結果）：血圧値、心血管イベント、心血管死亡および全死亡が低下
なぜこの論文を？
以前紹介した「KCl含有食塩代替物は脳卒中や死亡を減らす」のSSaSS論文を含んだメタ分析がACP journal clubで取り上げられていました。
いまをときめく食塩代替物の話題がメタ分析で読めるなんて！とテンション上がりましたが内容は少し期待はずれ。SSaSS以上の情報は少ないです。
ACP journal clubより
In the general population, salt substitutes vs. regular salt reduce BP levels, CV outcomes, and mortality
http://doi.org/10.7326/J22-0091
もと論文：Heart. 2022;108:1608-15.臨床疑問：一般人口に対し、食塩代替物は通常の食塩と比較して、血圧値および臨床イベントを減少させるか？
デザイン：
2021年8月までに複数のデータベースを検索
一般集団に対する食塩代替物（塩化ナトリウムの5％以上を塩化カリウムに置換）と通常の食塩を比較したparallel-group, stepped-wedgedまたはcluster RCTを検討した。
対象となった研究：
21件のRCT（n=31,949、年齢中央値21〜75歳、男性14〜100%、参加前収縮期血圧中央値113〜177mmHg、拡張期血圧中央値71〜105mmHg）
食塩代替物のカリウム含有量は25〜65%
9件のRCTは高血圧患者のみを対象
11件のRCTは、無作為化プロセス、介入偏差、アウトカムデータの欠落、アウトカム測定、または報告された結果の選択に基づくバイアスのリスクが全体的に低かった。基金：外部資金なし
結果概要：一般人口において、食塩代替物と通常の食塩を比較すると、血圧値、心血管イベント、心血管死亡および全死亡が低下する
批判的？吟味
SSaSSがデカすぎる問題
メタ分析で食塩代替物の有効性が示された！明日から患者宅の塩も替えてもらったり、何なら自分でカリウム入りの塩を売り出そう！と考えるのは早計です。
元論文のメタ分析を見てみましょう。
上の図はフォレストプロットというものです。一番上のAでは死亡について論じられています。Studyの欄には上から研究が並んでいて、異彩を放つのはSSaSSの研究です。この研究だけ、研究参加者が異常に多いんです。88.4%のWeightがあります。SSaSSの結果≒メタ分析の結果で、合算する意味あったの？と思うくらいです。
SSaSSの論文は過去に紹介しているのでこちらも参照ください。
一般人口というものの・・・
ACP journal clubの本文で触れられていますが、「一般人口に対して食塩代替物は有効！」というものの、SSaSSの参加者は中国の農村に住む方たちです。しかも脳卒中の既往または収縮期圧160以上が組入基準で、一般人口というには少し無理があります。
厳密に外的妥当性を考えると「高血圧か脳梗塞の既往のある農村に住む中国人に対して食塩代替物は有効！」が妥当な表現です。
日本人は中国人と同じアジア人であるので、北米の人に比べると当てはめやすい気はします。高カリウム血症などに注意すれば効果を期待できそうなので、日本人対象の研究が待ち遠しいです。
まとめ
食塩代替物のメタ分析が出ましたが、中国農村部の方を対象としたSSaSS試験以上の情報は乏しいです。
研究をデザインしようとすると、家の食塩を取り上げてカリウム入りの食塩代替物を配給する形式になるのでしょうか？なかなか大変そうですが、日本人対象に研究があるといいな、と思いました。
