I(介入):認知行動療法を行うスマホアプリ
C(対照):コントロールアプリ
O(結果):90日でHbA1cが0.39%低下
なぜこの論文を?
糖尿病に限らず、高血圧でも脂質異常症でも患者さんへの生活指導は重要です。ただ、外来でも通り一遍のお話をした後は、薬を処方し続けて検査をチェックする形になりがちです。
認知行動療法など、踏み込んだ診療ができればいいのですが、忙しい外来ではなかなかできません。そんな中、スマホアプリで認知行動療法を行い、HbA1cを低下することができるか?の論文がACP journal clubで取り上げられていました。
ACP journal clubより
In type 2 diabetes, the BT-001 smartphone app reduced HbA1c more than a control app at 90 d
https://doi.org/10.7326/J22-0109
元論文:Diabetes Care. 2022;45:2976-81.臨床疑問:2型糖尿病患者に対して手術、血糖コントロール改善を目的とした認知行動療法を行うスマートフォンアプリ(BT-001)の有効性と安全性はどの程度か?
デザイン:RCT
盲検化:割付隠蔽化は不明確。非盲検化
セッティング:米国の12臨床センター患者:18〜75歳の糖尿病患者725名
年齢中央値58歳、女性55%
HbA1c:7〜11%、BMI≧25
主な除外基準:現在の喫煙、摂食障害、インスリンまたはステロイドの使用介入:180日間の試験期間
I:365名。BT-001スマートフォンアプリ群、90日間が1クールで2クール施行。健康と病気に関する信念、栄養と食品の種類の重要性、運動、個人と家族、文化、社会との関わり、食事や運動に伴う快・不快感覚、個人の信念と障壁を扱う13のモジュールで構成
C:コントロール・アプリ群基金:Better Therapeutics Inc.
結果概要:2型糖尿病患者に対して、認知行動療法を実施するスマートフォンアプリ(BT-001)は、90日時点でコントロール・アプリよりもHbA1cを低下させた
批判的?吟味
BT-001スマートフォンアプリとは?
開発元のBetter Therapeutics社のサイトに行くと、上のようなスマホの画面が資料としてありました。買い物に行くときに予めリストを作りましょうとか、ストレス時の対処についてガイドがあるようです。
イメージとしては、OWL.のようなダイエットアプリのすごい版?みたいなものでしょうか?筋トレをするように促してくれたり、食事のカロリーについてもフィードバックしてくれます。リングフィットアドベンチャーもそうですが、常に褒めてくれるのはモチベーション維持につながらいます。しかし、アプリでどのように認知行動療法的な効果を得られるのかが不明ですが・・・
Better Therapeutics社はデジタル治療薬としてFDA認可を目指しているようです。他にもNASH/NAFLDや高血圧に対するスマホアプリを開発しているようでした。
さすがにセラピストが行う認知行動療法との比較試験は難しいかもしれないですが、スマホで手軽に認知行動療法的なものが受けられるのであれば期待したいところです。これから期待される分野ですね。
当然、オープンラベルの試験
この研究はスマートフォンアプリ群とコントロールアプリ群に分けて比較しています。当然ながらシャム・アプリ(偽アプリ)は使えないと思いますので、オープンラベルの試験です。
情報バイアスが残り、プラセボ的な効果は否定できませんが、それでもHbA1cが0.39%下がるならDPP-IV阻害剤(0.5〜1.0%低下)に近い効果が期待できます。
まとめ
前回紹介したオープンソースのインスリン投与アルゴリズム同様、進歩が期待される分野です。
認知行動療法は技術も必要で時間も要するのですが、スマホが代用してくれるなら患者さんにもメリットは大きいでしょう。