ACPJC

DOAC少なめにしても出血は減らず、死亡率増加

まとめると

P(患者):心房細動のある患者

I(介入):推奨量より少ないDOACの用量
C(対照):推奨量通りのDOACの用量
O(結果):出血は減らず、死亡率増加

なぜこの論文を?

超高齢者やCKDの悪い心房細動の患者さんにDOACを「控えめに」出してしまうことはないでしょうか?添付文書とにらめっこをして、出血が怖いので少し少なめにしておこうという心理です。

ACP journal clubより、低用量のDOACは患者に害をもたらすのか?をまとめた観察研究のSystematic Reviewの紹介です。

ACP journal clubより

In AF, underdosing of DOACs was not linked to reduced bleeding
https://doi.org/10.7326/J23-0010
元論文:Heart. 2023;109:178-85.

臨床疑問:非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において、DOACの非推奨用量は臨床転帰にどのような影響を与えるか?
方法:NVAF患者におけるアピキサバン、ダビガトラン、エドキサバン、リバーロキサバンの非推奨投与(添付文書やガイドラインの推奨量より低い、または高い)の結果を報告した研究を、2020年10月まで複数のデータベースで検索した。
対象の研究:63のコホート研究と43の横断研究が組入基準を満たした。臨床結果を報告した34件の研究のうち、15件(n= 158,100、追跡期間:4ヶ月~5年)がメタ分析に含まれた。研究の質は、高(8研究)、中(11研究)、低(1研究)と評価された。
基金:バイエル社

結果概要:NVAF患者において、DOACの推奨量より少ない用量は出血の減少に結びつかなかった。推奨量より多いDOACは、出血の増加につながった。

批判的?吟味

I2って何?

I2統計量は結果のばらつきを評価しています。I2が小さいとばらつきは偶然によるものと考えられ結果要約の点推定値が信頼できます。I2が大きいと、結果のばらつきは偶然以外の理由があると考えられ、何が原因か考える必要があります。

ACP journal clubの表だと、Lower vs. recommended dosingの列、Mortalityの行ではHR1.28(1.10 to 1.49) 、I2は70%です。異質性を評価するI2統計量は50%以下であれば、異質性の心配がない=結果は一貫していると言えますが、70%は高い数字です。

医学文献ユーザーズガイド第3版 p.597 より

もと文献のフォレストプロットをみてみると

Heart. 2023;109:178-85.

Cho_2020_RIVA、Kim_2019などが低用量DOACが有利な結果になっているんで、一貫していないといえます。観察研究が対象ですので患者背景も変われば、当然結果も変わる可能性が出てきます。

交絡因子はないか

観察研究では交絡因子を取り払うことはできません。DOACを低用量にしてしまう動機は、患者が脆弱で出血リスクが高そうな場合です。この時、患者は脆弱なので、死亡リスクも高くなってしまいます。

観察研究には限界がありますので、その上で結果を評価しないといけません。

低用量DOACは悪なのか?

推奨用量ではないDOAC使用は悪いかもしれない、少なくとも良いとは言えない、というのがこの論文の結果だと思います。

一方、日本の超高齢の心房細動患者を対象にエドキサバン15mg対プラセボで有効性・安全性を評価した臨床試験があります。

日本人が対象で、年齢中央値が86.6歳で本当に超高齢者が対象の臨床試験です。第一三共がしっかりとスポンサーしています。組入基準と似ていれば、他のDOACを低用量で処方するよりもエドキサバンで処方したほうがよいかもしれません。患者の好みや価値観を把握して、HAS-BLEDなどで出血リスクを評価した上で、にはなりますが。

まとめ

低用量でDOACを処方しても、出血リスクは低下せず、むしろ死亡が増えるという観察研究のメタ分析を紹介しました。

どうしても推奨用量より少ないDOACを出す場合にはエドキサバンが選択肢にはなります。ですが、そもそもの患者の好みや価値観や真の予防効果(NNT)で患者さんや家族と相談したほうが良い気がします。

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