ACP journal clubより
よく使われる降圧薬はABCDでまとめることができます。
- A:ACE-I/ARB
- B:βブロッカー
- C:Caチャンネルブロッカー
- D:Diuretics(利尿薬)
この中で、ACE-IやARBは糖尿病患者(特にCKD合併)での使用を推奨されています。
降圧薬を糖尿病予備群(HbA1c 5.7-6.4%)に使用することで、新規の糖尿病発症(HbA1c 6.5%)を防ぐことができるか?降圧薬の種類で異なるのか?の研究。
Antihypertensive drugs reduced risk for new-onset type 2 diabetes; effect varies by antihypertensive class.
Lancet. 2021;398:1803-10.
https://doi.org/10.7326/J22-0018
臨床疑問:5つのクラスの異なる降圧薬は新規2型糖尿病リスクを減らせるか?
方法:高血圧RCT(The Blood Pressure Lowering Treatment Trialists Collaboration (BPLTTC) )に登録された患者データを用いたIPDメタアナリシス。除外患者:糖尿病患者、糖尿病患者を対象とした臨床試験に登録された患者
対象となった研究:19のRCT(n=145,939)を1段階法*1で、22の試験をネットワークメタ分析*2で評価
結果概要:降圧薬は新規2型糖尿病発症を予防する。ただし、効果はクラスにより異なる。
ACE-IとARBは16%のリスク減少が認められました。ただ、絶対リスク減少はそれぞれ1.19%と0.56%、NNTにして85と179、と少し控えめなインパクト。しかし、漫然と降圧薬を出すくらいなら、種類にこだわって処方する価値はあります。
降圧薬の選択について、糖尿病予備軍では「この降圧薬が良い!」という推奨はありませんでしたが、将来を見越してACE-I/ARBを選択するのがよいかもしれません。とりあえず、CCB使っておけというのは避けたほうがよさそうです。
今回でてきたIPD(Individual Participant Data) meta-analysisについて
メタアナリシスは過去のRCTのデータを使用します。通常のメタアナリシスは登録された患者データを統合された形(=発表後の形)で扱います。IPDメタアナリシスは参加者個々人のデータを用いたメタアナリシスを行う点が大きな違いです。ネットワークメタアナリシスについても調べてみましたが、数学的処理が難解でさっぱり理解できませんでした。普通は1対1で比較しかできないのが、ネットワークメタアナリシスでは3種類以上の薬剤効果を比較できるようです。
*1 1段階法 個人ごとに得られたIPDをそのまま「解析の単位」として解析を行う
https://www.ism.ac.jp/~noma/2017-06-18%20IPD%20Meta-analysis.pdf
*2 ネットワークメタアナリシス 普通のメタアナリシスでは2種類の薬剤効果を比較するが、いろいろ数学的な処理をして、3種類以上の薬剤効果を比較できる
https://www.sas.com/content/dam/SAS/ja_jp/doc/event/sas-user-groups/usergroups2016-b-01.pdf