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急性心不全に対し、ループ利尿薬静注にアセタゾラミドを追加すると、3日目の除水成功率が改善

まとめると

P(患者):ループ利尿薬内服中の急性心不全患者

I(介入):ループ利尿薬静注+アセタゾラミド
C(対照):ループ利尿薬静注単独
O(結果):3日目の除水成功率が改善(NNT=8)

なぜこの論文を?

CS2心不全に対しては、とりあえずループ利尿薬(≒フロセミド)静注と条件反射のように対応していましたが、十分な尿量が得られないことがあります。

そこで、近位尿細管に作用するアセタゾラミド(ダイアモックス®)を追加すると、尿量が得られるか?という論文がACP journal clubで取り上げられていました。

ブログ主はアセタゾラミドの処方経験は少なく「登山時の高山病予防」くらいしか記憶にありません。効果はどれほどのものでしょうか?

ACP journal clubより

In acute decompensated HF, adding acetazolamide to IV loop diuretics reduced congestion at 3 d
https://doi.org/10.7326/J22-0095
元論文:N Engl J Med. 2022;387:1185-95.

臨床疑問:急性心不全患者に対し、ループ利尿薬静注にアセタゾラミドを追加することで除水の成功率が上がるか?
デザイン:RCT(ADVOR trial)
盲検化:割付は隠蔽化。盲検化(患者、臨床医、治験責任医師、他の臨床施設のスタッフ、スポンサー、データ解析者)
セッティング:ベルギーの27の臨床施設

患者:急性非代償性心不全で入院した患者519例(年齢中央値78歳、男性63%)
・容量負荷の臨床所見が1つ以上あり
・NT-proBNP>1000pg/ml以上またはBNP>250pg/ml
・フロセミド40mg以上または同等の維持療法を1ヶ月受けている

主な除外基準:アセタゾラミド維持療法または他の近位尿細管利尿薬の投与、収縮期血圧<90mmHg、eGFR<20ml/min/1.73m2

介入:ランダム割り付け直後とその後2日間(合計3日間)または完全に除水するまで静脈内投与
I:アセタゾラミド500mg/日(n=259)
C:プラセボ(n=260)
両群とも経口維持量の2倍のループ利尿薬を無作為化直後に単回ボーラス投与、その後2日間に2回に分けて(6時間以上間隔をあけて)点滴静注

基金:ベルギー医療知識センター

結果概要:急性心不全に対し、ループ利尿薬静注にアセタゾラミドを追加すると、3日目の除水成功率が改善

批判的?吟味

 外的妥当性はあるか?

CS2の急性心不全に対して、ループ利尿薬静注にアセタゾラミド(ダイアモックス)を追加すると、治療開始3日後の除水がうまくいくという結果でした。NNT=8と大変魅力的な数字を出しています。

死亡や腎障害、再入院などについては群間差はなく、低カリウム血症や重篤な代謝性アシドーシスなども増加しなかった点も使いやすいかもしれません。

ただ、参加者はベルギー在住で白人が99%組み入れられていました。アジア人、日本人に適応できるかはまだわかりません。残念ながら日本では外的妥当性が低いです。

除外された患者

他の近位尿細管利尿薬が投与されている患者は除外されています。この中にはSGLT-2阻害剤使用中も含まれます。SGLT-2阻害剤内服中でも、アセタゾラミドを追加して効果があるのか、逆に害が増えるのかはまだわかりません。

また、試験参加前1ヶ月間フロセミドを飲んでいることが組入基準になっています。初発の心不全やACS疑いは除外されていることも注意が必要です。

まとめ

急性心不全患者にアセタゾラミド追加で除水が上手くいく!という結果は非常に魅力的でありますが、日本人にも当てはめてよいかがまだ疑問です。日本人対象の試験結果が待ち遠しいところです。

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