Composite Outcomeはたくさんの問題点
- 企業スポンサーの試験が多い
- 死亡と入院を複合している
- 構成要素データが提示されず、真の死亡の比較ができない
なぜこの論文を?
ACP journal clubを中心に論文を紹介していますが、プライマリエンドポイントが複合アウトカムComposite Outcomeの論文が多いことに驚きます。
今回はBMJから、複合アウトカムの問題点を論じたSystematic Reviewを元に、これまで紹介してきた論文の問題点を検討してみます。
BMJより
Definition, reporting, and interpretation of composite outcomes in clinical trials: systematic review
Gloria Cordoba, et al.
BMJ 2010;341:c3920
http://doi.org/10.1136/bmj.c3920デザイン:Systematic Review
対象とした試験:2008年出版の結果が複合アウトカムである40RCT
基金:外部資金なし
結果:
心血管系:29RCT(73%)
企業からの資金拠出:24RCT(60%)
複合アウトカムの構成要素中央値:3(2-9)主な掲載誌:
NEJM 6, JAMA 4, AHJ 3, Lancet 3, BMJ 2, Circulation 2, Transplantation 2, その他18Tabel 2|2008年に発表されれた40RCTで用いられた複合アウトカムの定義と報告
主な問題点(n=40)
- 28RCTが構成要素が類似しない
- 20RCTが死亡と入院を複合している
- 13RCTが要旨、方法、結果の間で構成要素が一貫しない
- 9RCTが構成要素のデータ提供なし
- 4RCTが事後的(post hoc)に構成要素を作成
- Abstractでは研究の成果を誤認させる表記になっている
批判的?吟味
死亡と胸痛を複合アウトカムにすることも可能!
極端な例ですが、
- 例えば死亡と胸痛を複合アウトカムにする
- 本当に死亡と胸痛を同列にしていいのか?
- 胸痛がたくさん減って、死亡が少し増えても複合アウトカムは見かけ上改善?
(BMJ 2010;341:c3920, http://doi.org/10.1136/bmj.c3920)
という問題をはらんでいます。しかもAbstractでは心血管イベントを減少した!と記載することができるので、読者を容易にミスリードできます。
計算が合わない
複合アウトカムとしては改善しているように見えても、実際死亡は減っているのか?がよくわからない例が示されていました。以下はロスバスタチン対プラセボで複合アウトカムが改善している!と主張している論文です。
Rosuvastatin to Prevent Vascular Events in Men and Women with Elevated C-Reactive Protein
N Engl J Med 2008; 359:2195-2207から引用
問:心血管関連死はそれぞれ何人でしょうか?
みなさんも少し考えてみてください。表の中には、全死亡が含まれていたり、非致死的な心筋梗塞が含まれていて、複雑です。
(BMJ 2010;341:c3920, http://doi.org/10.1136/bmj.c3920)
解法1では、(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)から非致死性の心筋梗塞・脳卒中を引いて数字を出しています。
解法2では、(全心筋梗塞ー非致死性心筋梗塞)+(全脳卒中ー非致死性脳卒中)で、数字を出しています。
解法1では30数人心血管死がありそうですが、解法2では12人の心血管死です。どこかで数字のマジックが発生しているのでしょうが、不可解です。
これまで紹介した論文からは
高齢者の厳密な血圧管理での心血管イベント
死亡と入院が複合アウトカム
GNR菌血症に抗菌薬7日間vs14日間
死亡と再入院・長期入院が複合アウトカム
肝硬変にアルブミン連日投与
死亡と感染症発症、急性腎障害が複合アウトカム
試験開始時は臓器障害だった項目が急性腎障害に変更
まとめ
2008年の時点で、一流誌に多数の複合アウトカムの論文が掲載されていました。そして、いまでもたくさん複合アウトカムがエンドポイントの臨床試験が行われています。もちろん、有意差を出すためには、複合アウトカムをエンドポイントに設定せざるを得ない場合もあります。特に読む側としては、Abstractにかかれている結論と、本文中の結論が異なる場合があるので誤読しないように注意が必要ですね。
アイキャッチ画像はひらがなとカタカナが混ざったフォントです。読めそうで読めなくて惑わされます。作者様の発想に感動。