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基礎インスリン+GLP-1作動薬またはSGLT-2阻害剤は、インスリン4回打ちに対して非劣性

まとめると

基礎インスリン+GLP-1またはSGLT-2阻害剤は
インスリン強化療法に対し非劣性
低血糖少なく、HbA1cは同等だが長期予後は不明

なぜこの論文を?

コントロール不良の糖尿病患者さんの血糖管理にインスリン4回打ちがよく使われていました。血糖は確かに下がりますが、高齢者では回数が多く介護負担になったり「施設では1回しか打てないですよ」と言われたり低血糖になったりといろいろと問題があります。

インスリン4回打ちに対して、基礎インスリン+GLP-1作動薬またはSGLT-2阻害剤が非劣性であった、という研究。

ACP journal clubより

Basal insulin plus GLP-1 RA or SGLT2 inhibitor was noninferior to basal-bolus insulin intensification for HbA1c in T2DM
https://doi.org/10.7326/acpj202109210-106

臨床疑問:血糖コントロール不良の2型糖尿病患者に対して、基礎インスリン+GLP-1作動薬またはSGLT-2阻害剤の併用は、基礎・追加インスリン強化療法4回打ちと比較して血糖コントロールはどうなるか?
デザイン:RCT
盲検化:割付は非隠蔽化、非盲検化
セッティング:ナポリ(イタリア)の1つの臨床センター

患者:35歳以上のHbA1c7.5%以上の2型糖尿病患者305名
年齢中央値61歳、女性59%
平均HbA1c8.6%
6ヶ月以上の基礎・追加インスリン療法治療中(メトホルミンの有無は問わない)
主な除外基準:DKAの既往、膵炎、腎障害、肝障害

介入
①基礎インスリン+GLP-1作動薬102名(デグルデク+リラグルチド:ゾルトファイ®またはグラルギン+リキシセナチド:ソリクア®)
②基礎インスリン+SGLT2阻害剤102名
③基礎・追加インスリン療法継続101名

基金:「Salute con Stile」基金

結果概要血糖コントロール不良の2型糖尿病患者に対し、基礎インスリン+GLP-1作動薬またはSGLT-2阻害剤は、6ヶ月後のHbA1c低下が基礎・追加インスリン療法に比べて非劣性である

批判的吟味

RCTだけど、盲検化されていない

RCTではありますが、割付は隠蔽化されていません。インスリン1日4回打ちとインスリン+GLP-1合剤を1日1回打つことを隠すことは難しいので致し方ないところです。また単施設の臨床研究でもあり、限界があるのでしょう。

対象の患者はHbA1c8%台、イタリア人、60歳前後

試験参加者のHbA1c中央値は8.6%で比較的悪いものの、HbA1c10%超えのような方が対象にはなりません。また、比較的若年であり、施設入所中の高齢者を対象としたセッティングにはなりません。また、イタリア人が中心であって、日本人にそのまま適応できるかは別問題です。

利益相反は?

研究資金は「Salute con Stile」基金から提供されていますが、この基金がどういうものなのかGoogleで調べてもわかりませんでした。著者らはノボ・ノルディスク(ゾルトファイ)、サノフィ(ソリクア)などから講演謝金を受け取っています。

非劣性マージンのHbA1cの差0.3%は妥当?

今回の非劣性マージンはHbA1c0.3%の差と設定されています。0.3%が妥当なのかわからないので調べてみたところ、過去に0.4%の差で設定した試験をもとに認可を求めたところ、FDAやEMA(欧州医薬品庁)に拒否された、という話がありました。あくまで血糖を下げ、HbA1cを下げる代替アウトカムが指標になっているため、心血管イベントの減少などのハードアウトカムは対象ではありません。

今回の研究は高齢者が対象ではありませんが、高齢者で厳密な血糖コントロールを求めず低血糖リスクを減らしたい場合には、インスリン4回打ちをするくらいなら持効型インスリン+GLP-1作動薬の合剤を使用してもよいかもしれません。低血糖・高血糖を防ぎたい、という目的には合致すると考えました。

まとめ

インスリン強化療法(4回打ち)が難しい患者さんはたくさんおられます。HbA1cが8%台の血糖コントロール不良な患者さんには、インスリン+GLP-1の合剤も選択肢に考えてよいでしょう。長期予後を期待するというよりは、低血糖・高血糖を起こさず穏やかに過ごしてほしいときに良い適応ではないでしょうか。

 

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