病棟

低カリウム血症

低カリウム血症の悩み

低カリウム血症の患者さんに出会ったけど、何をどうしたらいいかわからない

低カリウム血症の患者さんに、カリウム製剤を補充したけど全然カリウム値が上がってこない

このようなことでお困りでないですか?

今回は、低カリウム血症を効率よく治療するための鑑別の進め方を学んでいきましょう。

カリウムだけどSIO(Shift, In, Out)で鑑別する

S:Shift(細胞内シフト)
I:In不足
O:Out過剰

低カリウム血症をみたら、まずは細胞内シフトが起こっていないか確認しましょう。細胞内シフトは体内のカリウム量は正常なので、過剰にカリウム補正をすると思わぬ高カリウム血症を招くことがあります。In不足は飢餓状態、Out過剰は腎や腸管からの喪失を想定します。

シフトを見逃し、後悔ある(甲カイアル)

後悔ある(甲カイ、アル)

甲状腺機能亢進症
カテコラミン
インスリン
アルカレミア

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症による周期性四肢麻痺は重篤な低カリウム血症を生じることがあります。動悸や発汗、体重減少を伴っている場合には、甲状腺機能を確認しましょう。

カテコラミン

臨床現場ではあまり出会いません。しかし、高カリウム血症の治療として、β刺激薬の吸入を使うことがあるので、覚えておいて損はありません。

インスリン

コントロール不良の糖尿病の治療をしているときに、思いがけず低カリウム血症になってしまうことがあります。HHSやDKAの治療の際には、かならずカリウムチェックをしつつ補充を行いましょう。最悪の場合、低カリウム血症によるQT延長からVTに至ることがあります。高カリウム血症ではGI療法として、カリウムを下げる目的でインスリンを投与します。

アルカレミア

細胞外液がアルカレミアになると、細胞膜のNa/H交換輸送体が活性化されて、そのついでにカリウムが細胞内に取り込まれます(適当な説明ですみません)。高カリウム血症で重炭酸ナトリウムを投与するのは、この細胞内シフトを期待しているからです。

In不足

純粋なイン不足となることは多くありません。飢餓状態や神経性食思不振症・アルコール多飲による摂取不足が原因として考えられます。

Out過剰

Out過剰は腎臓以外(=ほぼ消化管)または腎自体からの喪失の2つを考えます。

KCRで腎臓からの喪失か否かを評価する

以前はTTKGで腎臓からのカリウム排泄を評価していましたが、最近になって「TTKGは使えない」とTTKGを提唱した先生自身が発表しました。そのため、腎からのカリウム排泄が多いか否かはKCR(カリウム・クレアチニン・レシオ)を使用します。

KCR=[尿K(mEq/L)]÷[尿Cr(mg/dl)]

KCR≧0.2 → 腎からの排泄亢進

KCR<0.2 → 腎からの排泄低下(=細胞内シフトや消化管からの喪失)

腎外からの喪失

主に消化管から下痢という形で失われています。

腎からの喪失

アルカレミアを伴う低カリウム血症で、KCR≧0.2であれば鑑別はABCDで考えましょう。

低カリウム血症のABCD

A: Aldosteronism(原発性アルドステロン症や偽性アルドステロン症)

B: Bartter /Gitleman症候群(先天性尿細管機能障害)

C: Cushing症候群

D: Diuretics(利尿薬)、Depletion of Mg(Mg不足)

鑑別はたくさんありますが、成人の場合では、

  1. 薬(甘草による偽性アルドステロン症、利尿薬)
  2. マグネシウム欠乏

の2つが頻度が多いので、まずは薬とマグネシウム欠乏を探しましょう。高血圧を伴っていれば原発性アルドステロン症の検索も行いましょう。

A: Aldosteronism(原発性アルドステロン症や偽性アルドステロン症)

甘草は漢方薬を内服している場合によく総合しています。売れ筋の漢方薬のなかでも、芍薬甘草湯、抑肝散、六君子湯、加味逍遙散、補中益気湯などに含まれます。意外と処方されていることが多いので、持参薬のチェックを行いましょう。

B: Bartter /Gitleman症候群(先天性尿細管機能障害)

先天性疾患なので、なかなか成人ではお目にかかることはないと思います。

C: Cushing症候群

こちらも頻度は少ないですね。

D: Diuretics(利尿薬)、Depletion of Mg(Mg不足)

ラシックス(フロセミド)、ダイアート(アゾセミド)はカリウムが尿中に排泄されてしまいます。薬は要チェックです。そして、今回強調したいのは、低マグネシウム血症です。

マグネシウムが欠乏すると、尿細管でのKチャンネルが開きっぱなしになってカリウム利尿が生じます。

マグネシウムは体内量の1%程度しか、血液中に存在していません。血液検査でマグネシウムが一見正常範囲であっても、マグネシウムが実際には足りないことが多々あります。鑑別を一つ減らすためにも、筆者は血清マグネシウムが高値でなければ積極的にマグネシウムを補充します。

血清Mg正常では低Mgの否定にならない!

まとめ

低K血症はSIO(Shift,In,Out)でアプローチ

腎からの喪失増加はKCR(尿K/尿Cr)>0.2が目安

腎からのカリウム喪失はABCDで評価

ABCDが面倒なら低Mgと薬(利尿薬と甘草)を検索

いかがでしたか?低カリウム血症の原因として、細胞内シフトや低Mg血症は見逃されがちです。細胞内シフトに気が付かず、カリウム補正をすると高カリウム血症になってしまいます(後悔ある!)。低Mg血症を補正しなければ、いつまでも尿中に喪失するのでなかなか低カリム血症は是正されません。補正の実際はまた別の記事で紹介します!

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