I(介入):鉄剤静注
C(対照):通常のケア
O(結果):心血管イベント+死亡が減少
なぜこの論文を?
心不全で入院となる患者さんに鉄欠乏のスクリーニングをしたほうがよいのでしょうか?貧血があれば、もちろんフェリチンやビタミンB12などの貧血関連検査を行いますが・・・
今回はACP journal clubより、鉄欠乏のある心不全患者に鉄剤静注すると再入院や総死亡は減るか?の論文です。コロナ禍で臨床試験を完遂するのは大変そうです。
ACP journal clubより
In HF with iron deficiency, IV ferric derisomaltose was associated with lower rates of HF hospitalization or CV death
https://doi.org/10.7326/J23-0012
元論文:Lancet.2022;400:2199-209臨床疑問:心不全と鉄欠乏を有する成人において、通常治療と比較して、デリソマルトース鉄剤の静脈内投与は長期的に心血管(CV)イベントを抑制するか?
デザイン:RCT
盲検化:割付は隠蔽化。盲検化(アウトカム判定者)
セッティング:英国内70の病院患者:18歳以上の患者1137名(年齢中央値73歳,男性74%,白人92%,外来診療所67%)
過去2年間に症候性HF,左室駆出率45%以下,鉄欠乏症(血清フェリチン<100μg/Lまたは鉄飽和度<20%)
主な除外基準:血清フェリチン値400μg/L以上、Hb値9g/dL未満、Hb値男性14g/dL以上、女性13g/dL以上介入:
I:フェリチンまたは鉄飽和度が規定値を下回った場合、治験来院日ごと(初回4週、その後4ヶ月毎)にデリソマルトース鉄静注(Hb値、体重に応じて)
C:通常のケア基金:British Heart Foundation and Pharmacosmos
結果概要:鉄欠乏症のある成人患者において、デリソマルトース鉄静注を通常ケアと比較すると、中央値2.7年後の総HF入院またはCV死亡の複合率の低下と関連していた(P= 0.07).
批判的?吟味
デリソマルトース鉄とは?
デルイソマルトース鉄は商品名モノヴァーで、2022年3月に製造承認された比較的新しい鉄剤です。静注後に網内系に取り込まれて、徐々に骨髄で利用されるようです。週1回で最大1000mg投与することができるので、短期間で鉄を補充することができます。
なぜ、オープンラベル?
盲検化はアウトカム評価者のみで、患者と臨床医は盲検化されていません。鉄剤は真っ黒な製剤なので、盲検化は難しく致し方がないところだと思います。オープンラベルで入院がアウトカムに入っているのは望ましくないですが、入院だけでなく死亡も共に減少しているので許容されると思います。
Aが心不全入院+心血管死、Bが心不全入院、Cが心血管死
有意差ないのになぜ、ACP journal clubに?
主要なアウトカムは心不全による入院+心血管死の複合アウトカムです。リスク比risk ratio(relative risk)は0.82(95%信頼区間:0.66-1.02)、P=0.07と0.05を上回っています。なぜ、これでACP journal clubに採用されたのでしょうか?
次の行にはCOVID-19感度分析と書いてあり、パンデミックの影響があります。英国では外出禁止令が出てしまったので、外来受診ができず鉄剤投与を受けることができなかったのです。
感度分析がどのように行われたかは本文中にはっきりとした記載がありませんでした。もしかしたら書いてあるのかもしれませんが。Supplementary Materialは315ページに及ぶため断念しました。
感度分析の概要はこちらから
まとめ
どうでもいいことですが、サムネイルはChatGPTにプロンプトを書いてもらい、Canvaで作成しました。
「アール・ヌーヴォー調のミュシャ風の春の女性が、手に鉄製の真っ黒いハート型のアイテムを持っている様子を描いてください。女性は優雅で美しいポーズをとり、彼女を取り巻く装飾的なフレームや花々が春の訪れを感じさせる雰囲気を演出しています。」
ちょっと期待していたものと違いますので、まだまだ精進が必要です。