I(介入):週1回投与の基礎インスリンFc(BIF)
C(対照):1日1回デグレデク
O(結果):26週時点のHbA1cが非劣性
なぜこの論文を?
最近、インスリンとGLP-1作動薬の合剤を処方する機会がありました。食欲旺盛な高齢な方に処方したのですが、血糖コントロールは非常に容易になりました。
ブログ主が研修医のころには、中間型インスリンが一般的で基礎インスリンとして朝・夕2回打ちが多かったです。打つ人も、打つ介助をする人も大変でした。GLP-1作動薬は週1回製剤もあるので、インスリンも長く効く製剤が出ないか?と思っていましたがついに出てきたようです。
ACP journal clubより
In type 2 diabetes, weekly basal insulin Fc was noninferior to daily insulin degludec for HbA1c at 26 wk
https://doi.org/10.7326/J23-0046
元論文:Diabetes Care. 2023;46:1060-1067.臨床疑問:インスリン使用歴のない、経口血糖降下薬治療中の2型糖尿病患者に対し、週1回投与の基礎インスリンFc(BIF)は1日1回のインスリン・デグレデクに対して26週時点のHbA1cは非劣性か?
デザイン:RCT、オープンラベル、非劣性試験
盲検化:割付は隠蔽化。盲検化なし
セッティング:アルゼンチン、ドイツ、ポーランド、米国の61の臨床センター患者:治療歴3ヶ月以上、メトフォルミン治療単独またはDPP-4阻害剤and/orSGLT-2阻害剤併用、HbA1c7.0-9.5%、BMI20〜45、過去3ヶ月に体重変化5%以上なしの18〜72歳の2型糖尿病患者278名
年齢中央値58歳、男性58%介入:
I:週1回投与の基礎インスリンFc(BIF)
C:1日1回デグレデク
BIFはリブレの測定値と紙ベースのアルゴリズムによる空腹時血糖値に基づいて行われた。投与は最初の12週間は臨床センターで行われた。デグレデクは自宅で自己注射された。基金:イーライリリー
結果概要:経口血糖降下薬による治療歴のあるインスリン未治療の2型糖尿病患者において、26週時点のHbA1cの変化において、週1回のBIFは1日1回のインスリン・デグルデクに対して非劣性であった。
批判的?吟味
週1回のインスリン製剤?
ついに、週1回のインスリン製剤が実用的になりました。BIF(イーライリリー)は、IgG2免疫グロブリンのFc成分と結合した一本鎖インスリン変種からなる融合蛋白らしいです。IgGとくっつけることで、腎での代謝が遅くなり作用時間が長くなるようです(超適当)。
週1回になると、介護現場での負担も減るでしょうし、福音ですね!
副作用はないの?
免疫グロブリンのようなものを使ったものではアレルギー様の反応が心配です。
Adverse events identified by standard Medical Dictionary for Regulatory Activities query for hypersensitivity reactions were reported more frequently with BIF (six vs. zero patients for degludec), and such events will be monitored in the phase 3 trial.
標準的なMedical Dictionary for Regulatory Activities queryで過敏症反応として特定された有害事象は、BIFでより多く報告されており(デグルデクでは0例に対して6例)、このような事象は第3相試験でモニターされる予定である。
(Diabetes Care. 2023;46:1060-1067.をDeepL翻訳)
過敏症反応はBIFで報告されているので、今後の安全性評価に期待です。
量はどう決めるの?
もともとインスリンを使っていたわけではないので、どう換算するのかが気になるところです。元論文のsupplementをみると
と、空腹時血糖✕体重でアルゴリズムが複雑で、さらに複数visitごとでもアルゴリズムが違うので大変そうですね。紙ベースでmedianを計算するとか辛すぎます。
まとめ
週1回のインスリン製剤についてのACP journal clubを扱いました。過敏症やアルゴリズムには課題がありそうですが、患者さんや介護者のQOLを上げてくれそうな製剤になりそうです。
針を使うとこと自体が嫌な糖尿病がある患者さんにはスティグマの意味でも負担軽減になって欲しいです。