ACPJC

ボノプラザン含有レジメンは、ピロリ除菌率90%以上

まとめると

P(患者):ピロリ菌感染の患者(一次除菌)
I(介入):ボノプラザン含有レジメン
C(対照):3剤除菌
O(結果):ボノプラザン含有が90%以上の除菌率

なぜこの論文を?

ピロリ菌の除菌にP-cab使用可能になったのは2016年です。高い除菌率を誇ると話題となりましたが、海外、とくに欧米ではP-cabピロリ菌による胃癌が少ないためもあってか、北米・欧米でボノプラザンが認可されたのは2019年と最近です。海外ではビスマスを使ったレジメンやPPI+抗菌薬3剤の4剤レジメンが使われてます。

ビスマスは日本ではあまり馴染みがありません。止痢薬として「次硝酸ビスマス」という製品がありますが、副作用の一番上に精神神経系障害が記載されており、副作用が多い薬のようです。

P-cabの時代、またCAM耐性が増えた時代にどのレジメンが良いのか?というネットワークメタ分析です。

ACP journal clubより

Vonoprazan-containing therapy has an H pylori eradication rate >90% and increases eradication vs. standard triple therapy
https://doi.org/10.7326/ACPJ202110190-117

臨床疑問:ピロリ菌の一次除菌で、2剤・3剤・4剤療法を比較すると効果はどのようなものか?
方法:2020年10月までの複数データベース
出版言語:英語
対象の試験:RCT、一次除菌で、治療期間7日以上、CAM入の3剤標準療法。各群50人以上。
除外:薬剤の用量や治療期間のみを対象としたもの
対象となった試験:68のRCT(n=22,975)、それぞれ106〜1620名が対象。8種類の一次除菌療法が評価された。
資金:外部資金なし

最重要項目:ピロリ菌除菌において、ボノプラザンを含むレジメンはリーバースハイブリッド療法は90%異常の除菌率を示し、ボノプラザンを含むレジメンのみ標準3剤療法より優位であった。

批判的?吟味

ネットワークメタアナリシス?

今回はネットワークメタアナリシスの論文でした。通常はA薬対B薬、B薬対C薬という2つの薬剤を比較した研究をデザインします。AとBを比べ、BとCを比べてはいますが、AとCを直接比較したわけではありません。

例えば、身長の比較で、太郎が次郎より10cm背が高い、次郎が三郎より5cm背が高いとします。太郎と三郎は直接比較していませんが、太郎が15cm高いことは予測できるでしょう。ネットワークメタアナリシスでは、薬剤毎に(今回は治療レジメン毎に)お互いに比較して検討しています。

リバースハイブリッド療法ってなに?

日本では、PPIまたはP-cab+抗菌薬2剤の3剤療法が標準的です。海外ではCAMの耐性率なども加味して治療方法を選択されているそうです。たくさんの種類があります。わかる範囲で調べてみましたが、日数などにバリエーションがあって誤りがあるかもしれません。

Sequential therapyが後半に薬剤を増やしていくのに対し、Reverse hybridは前半に4剤用いて後半で薬剤を減らします。ピロリ除菌は感染症なので、耐性菌を懸念するなら治療開始時に多剤併用するほうが合理的だと思うのですが、なぜSequential therapyが存在するのかまでは調べきれませんでした。

ピロリなんて東アジアの話でしょ

ピロリ菌は東アジアで問題になっている感染症です。研究も日本、中国、台湾などのものが多く含まれていました。ボノプラザンを含むレジメンは3件あり、全て日本の研究のみでした。日本なら当てはまるけど、海外で除菌するときに当てはまるかは未知数です。今後、東アジア以外でも報告が出てくると思われます。

Francis Chan先生

このACP journal clubはFrancis Chan先生という潰瘍の大家が書かれています。研修医のときの抄読会で抗血小板薬と胃十二指腸潰瘍についての論文を読んだ覚えがあります。抗血小板薬内服中の消化管出血に対して、抗血小板薬を中止し続けるか継続するかのRCTでした。当時ですら「そりゃ、抗血小板薬止めたらあかんやろ。非倫理的な!」と驚愕しましたが、こんな攻めたRCTのおかげで抗血小板薬は安易に止めてはいけない、という教えが広まったのでしょう。懐かしいです。

まとめ

日本ではボノプラザン含有治療レジメンが標準的に使用できます。このネットワークメタアナリシスを読んでもあまり臨床の実際が変わることはありません。ただ、CAM耐性はボノプラザン含有レジメンですら問題になりますので、やはり抗生剤の適正使用は必要です。

こちらの記事もおすすめ

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です