Advanced care planning

胃瘻造設のデメリット

まとめると

胃瘻の周術死亡率高い
12試験のメタ分析で
・高度認知症患者では、有意に高い死亡率(OR1.79)
・肺炎(OR3.56)、褥瘡(OR2.25)とリスク上昇
・生存期間に差なし

2022年3月号の「治療」に胃瘻造設についての話が掲載されていました。胃瘻に生存延長のエビデンスはないと言われてはいますが、しっかりと根拠をまとめられていました。

1999年のJAMAが引用されされていたので、読んでみると・・・

Tube Feeding in Patients With Advanced Dementia
A Review of the Evidence
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/191992

・PEGの死亡率は0~2%、周術期死亡率は6~24%。
・30日後の死亡は2~27%、1年後の死亡率は50%以上
・PEGまたは外科的胃瘻造設後1年で63%が死亡、3年までに81.3%死亡
・老人ホームでの非ランダム化、レトロな観察研究では経管栄養の生存の利点は見出されていない

この論文は、ランドマークなのでしょうが、いかんせん1999年の論文なので、最近の話も読んでおこうと思いました。

きちんと吟味せずにとりあえず新しいものを読み始めてしまったのですが・・・

The Efficacy and Safety of Tube Feeding in Advanced Dementia Patients: A Systemic Review and Meta-Analysis Study
https://doi.org/10.1016/j.jamda.2020.06.035

データベース:PubMed、Medline, Embase, Cochrane Library
検索語:(割愛するがたぶん妥当)
組入基準:①FAST, CDS, CPS, DRSにより分類された認知症終末期、②前向き・後ろ向き研究、症例対照研究、③介入群vs対照群(経管なし/人工栄養)、④十分なデータがある、⑤英語論文

症例対照研究も入っている。参考文献までは調べていなさそう。栄養状態(Albなど)については著者に連絡をとっている。

結果:12試験が対象
経管栄養あり1805例(平均年齢82.8歳、女性71.3%)
経管栄養なし3861例(平均年齢82.7歳、女性68.7%)
高度認知症患者では、有意に高い死亡率(OR1.79)
感度分析後、肺炎(OR3.56)、褥瘡(OR2.25)とリスク上昇
生存期間に差なし

言語が英語のみ対象のためか、日本の研究は入っていません。異質性についてはI2が69%とやや異質性が高いという結果。対象の性質上仕方がないように思います。

やはり20年経っても世界的には、結果は大きく変わっていません。日本ではもう少し生存率は良さそうではありますが、日本だけ特別良好な結果という理由はありません。ただ、高度認知症患者に対して、胃瘻を勧める根拠は乏しいです。肺炎、褥瘡でご本人を苦しめることにも繋がります。抑制など、本人の尊厳にも大きく関わってきます。

まだきちんと読めていませんが、

「日本での胃瘻造設は2007年をピークに減少している」
「意思決定のプロセスには、基礎疾患だけでなく、個人の年齢や社会的障壁、医師の個人的な考え方も考慮されている」
「日本の医師は、虚弱な高齢者に経管栄養を行うことを支持する証拠がほとんどないことに気づいているのかもしれません」

Decreasing Use of Percutaneous Endoscopic Gastrostomy Tube Feeding in Japan
Kosaku Komiya et.al
J Am Geriatr Soc. 2018 Jul;66(7):1388-1391
https://doi.org/10.1111/jgs.15386

とありました。意思決定に医師の考えだけが影響決定されることなく多職種でカンファレンスを行ったほうがよいでしょう。また、胃瘻を選択しないことが後悔につながらないように家族の方の意思決定を支援していく必要があります。ご家族の中には、胃瘻の成功体験がありなかなか諦められないこともあります。ナラティブな体験をエビデンスで頭ごなしに潰すことはできません。

また、これらの研究はあくまで高度認知症の患者さんが対象です。神経疾患や頭頚部疾患等の患者さんの胃瘻造設を否定する意図はありません。PEGとは良い付き合い方をしてより良い未来を作っていきたいです。

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