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オープンソース自動インスリン投与システム(AID)は目標血糖値時間を改善する

まとめると

P(患者):インスリンポンプをしている1型糖尿病患者

I(介入):オープンソース自動インスリン投与システム(AID)
C(対照):センサー付きインスリンポンプ療法(SAPT)
O(結果):AIDが目標血糖値時間を改善

なぜこの論文を?

1型糖尿病の患者さんの血糖管理に苦労することが多々あります。低血糖・高血糖を生じやすく、食事での変動も大きいです。

インスリン投与量を患者さんと相談しながら変更はするのですが、AIの時代にずばっと解決するいい方法はないのか?と考えます。早く人工膵臓ができたらいいのに、と待望んでいましたが、もう人工膵臓の時代はすぐ近くまで来ています。

ACP journal clubから、オープンソース自動インスリン投与システム(AID)の効果を検討した論文の紹介です。

ACP journal clubより

In T1DM, open-source automated insulin delivery increased glucose time in target vs. sensor-augmented pumps
https://doi.org/10.7326/J22-0108
元論文:Burnside MJ, Lewis DM, Crocket HR, et al. Open-source automated insulin delivery in type 1 diabetes. N Engl J Med. 2022;387:869-81.

臨床疑問:成人および小児の1型糖尿病において、オープンソースの自動インスリン投与システム(AID)は、センサー付きインスリンポンプ療法(SAPT)と比較して、どのような有効性と安全性があるか。
デザイン:RCT
盲検化:割付は隠蔽化。非盲検化
セッティング:ニュージーランドの4臨床センター

患者:97名
・T1DMと診断されて1年以上
・インスリンポンプ治療の経験が6ヵ月以上
・HbA1c<10.5%
7~70歳の成人(n=49、年齢中央値40歳、女性61%)および
小児(n=48、年齢中央値13歳、女子50%)

介入
I:オープンソースのAIDシステム(n = 23成人,21小児)
AndroidAPS 2.8アルゴリズムの修正版と、生産前のDANA-iインスリンポンプ(SOOIL)および持続グルコースモニター(CGM)(Dexcom)の組み合わせ
ユーザーインターフェース(AnyDANA-loopスマートフォンアプリ)は、食事時のインスリン投与とグルコース目標値に対応した自動インスリン供給に使用

C:SAPT(n = 26成人,27小児)。
高血糖・低血糖アラート機能付きCGMを、先発品のDANA-iインスリンポンプまたは患者の通常のインスリンポンプと併用、ボーラスインスリン投与を行った。
低血糖値の予測やインスリン投与の中断などの機能はなし。スマートフォンアプリ「Monitor」からNightscoutに持続血糖値モニタリングデータを送信した。

基金:ニュージーランド保健研究評議会。SOOIL Development社,Dexcom社,Vodafone New Zealand社から機器提供のサポートを受けた.

結果概要:1型糖尿病の成人および小児において、オープンソースのAIDシステムは、SAPTと比較して155~168日目に目標グルコース範囲にいる時間を増加させた。

批判的?吟味

SAPTとは?AIDとは?

まずは今回の比較対象になっているSAPT(Sensor Augmented Pump Therapy)はリブレ®のような持続的血糖測定器でモニターして、血糖情報をインスリンポンプに送ります。

UpToDateから(2023年1月13日アクセス)

基礎インスリン分は自動で補充してくれて、高血糖・低血糖があるとアラームで教えてくれます。

AID(automated insulin delivery)は、上記のSAPTに加えてインスリン投与量を自動的に調整して目標血糖値内に収まるようにしてくれます。SAPTでは高血糖・低血糖を教えてくれはするけど、手動でインスリン量を調整してしないといけなかったのですが、AIDになると調整も自動なので患者負担は減ります。

今回のAIDはオープンソースのものが使われています。日本で言えば厚生労働省の認可、米国でいればFDAの認可はないですが、十数年に渡って有志によって1型糖尿病のデータが蓄積され改善され続けているようです。Git-hubに登録されたアプリのようなイメージでしょうか。

なぜ、オープンソース?

企業が作り、厚生労働省的なところから認可されたシステムももちろん存在しますが、高価で患者負担が大きくなってしまいます。オープンソースAIDは1型糖尿病の患者さん同士が助け合って、システムを育ててきた背景があります。

「野良アプリ」を信頼していいのか?という議論はもちろんあります。しかし、今回の研究でオープンソースであっても重症低血糖などの副作用なく、目標血糖値を安全に達成できるメリットが示されました。

ACP journal clubでは、臨床医が患者から学び、患者をサポートする姿勢が必要と締めくくられています。

まとめ

今回は、批判的吟味は全くしていませんが、オープンソースAIDについてのACP journal clubを紹介しました。

技術革新が大きく進んでいて、当局からの認可が追いつかない/齟齬が生まれる状態が生まそうです。安全性と利便性のバランスをどう取るかが問題になりますが、患者さんにとってよい方向に進んでほしいです。

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