ACPJC

コロナワクチン接種で免疫介在性神経疾患は増えない

まとめると

P(患者):成人

E/C(暴露):コロナワクチン接種
O(結果):免疫介在性神経疾患は増えない
(COVID-19感染後は免疫介在性神経疾患が増える)

なぜこの論文を?

コロナワクチン反対派の意見はいろいろあり、副作用を強調する声は大きいです。しかし、ワクチン接種がLong COVIDを減少させるデータもしっかり出ています。

以前、シングリックス®投与でGuillain-Barré症候群がわずかに増えるというACP journal clubを紹介しました。今回は、コロナワクチン接種でGuillain-Barré症候群やその他の免疫介在神経疾患は増えるのか?コロナ感染と比べてどうか?という論文です。

遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチン(RZV)接種でGBSがわずかに増えるシングリックス(帯状疱疹ワクチン)でGuillain-Barré症候群(GBS)が増えるか?100万回に3例とごくわずかの増加。Self-controlled study designsも学びました。...

ACP journal clubより

COVID-19 diagnosis, but not vaccination, was linked to increased risk for immune-mediated neurologic events
http://doi.org/10.7326/J22-0048

臨床疑問:成人で、コロナワクチンは免疫介在性神経疾患は関連するのか?COVID-19感染は関連するのか?
デザイン:人口ベースコホート研究。スペインでは病院データとリンクしたプライマリ・ケア記録、英国ではプライマリ・ケア記録から日常的に収集した医療データを利用。
セッティング:カタルーニャ地方(スペイン)、英国

患者:18歳以上で1年以上のデータが入手可能な患者
ワクチン接種者コホート:ワクチンを1回以上接種した8,330,497人(年齢中央値51-72歳、女性47-60%)。
初回接種時期:
スペインは2020/12/27〜2021/6/23
英国は2020/12/8〜2021/5/2
主な除外基準:異なるブランドのワクチン接種、指定した間隔(14-180日)以外での2回目接種
COVID-19感染者コホート:PCRまたは抗原検査で初回陽性となった735,870人(年齢中央値41-46歳、女性54%)
スペインは2020/9/1〜2021/6/23
英国は2020/9/1〜2021/6/23
主な除外基準:感染前のワクチン接種
一般集団コホート:2017/1/1時点でデータベースに登録された14,330,080人(年齢中央値47-48歳、女性50%)

暴露(E/C):ワクチン接種またはCOVID-19の感染

基金:英国国立衛生研究所と欧州保健データ・アンド・エビデンス・ネットワーク

結果概要:成人ではCOVID-19ワクチンは接種後21日目の免疫介在性神経疾患のリスク上昇と関連なし。COVID-19感染は90日後のBell麻痺、脳脊髄炎、Guillain-Barré症候群のリスク上昇に関連していた。

批判的?吟味

結果のまとめ

  • コロナワクチン群、COVID-19感染群をコロナ流行前の2017年と比較
  • 免疫介在性神経疾患(Bell麻痺、脳脊髄炎、Guillain-Barré症候群)の増加が増加するか?
  • コロナワクチンでは増えない(21日目まで)
  • COVID-19感染では増える(90日目まで)

という結果でした。

なんでワクチンは21日目までの評価で、感染後は90日までの評価?

ワクチン接種群は21日目までのイベントが評価されているにも関わらず、COVID-19感染群は90日後まで評価されています。

おそらく、ワクチン2回目接種が21日目なので、区切らざるを得なかったのでしょう。それでも、評価期間が大きく違うので公平か?と言われると疑問です。帯状疱疹後のGuillain-Barré症候群はリスク期間を42日目までとしていたので、ワクチン群に甘い結果が出かねません。

2017年と比べてもいいの?

Limitationsで、著者も2017年との比較について述べています。コロナパンデミック後は呼吸器感染症への暴露が減少し、暴露の減少がGuillain-Barré症候群などの減少につながった可能性があります。

何かとは比べないといけないので、100点満点の比較コホートは存在しません。historical contorl studyの限界ですが仕方ないでしょう。

Self-controlled study designs(自己対照研究デザイン)もしている!

本文を読むと実は2017年からのデータベース以外にも、Self-controlled study(自己対照研究)として対照を個人の過去の記録としていました。検出力が足らず、Bell麻痺しか検討されていませんが、有意な上昇はありません。

BMJ. 2022 Mar 16;376:e068373.

過去のSelf-controlled study designs(自己対照研究デザイン)の論文は↓

遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチン(RZV)接種でGBSがわずかに増えるシングリックス(帯状疱疹ワクチン)でGuillain-Barré症候群(GBS)が増えるか?100万回に3例とごくわずかの増加。Self-controlled study designsも学びました。...

まとめ

コロナワクチン接種では、Guillain-Barré症候群などの免疫介在性神経疾患は増えないという結果でした。そして、COVID-19感染ではむしろ免疫介在性神経疾患が増えます。ワクチン接種を推奨する根拠になります。

コホート研究はバイアスを取り除くのが非常に難しいですが、Self-controlled studyも混じえていたり、と工夫がされています。

こちらの記事もおすすめ

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です